さくらんぼが実を結ぶために
2018.01.23
園内に入り混じって育つ様々なさくらんぼ
たとえば、サクランボ園に撮影に行くと「どれが佐藤錦?どれが紅秀峰?」と確信が持てず迷ってしまいます。ちゃんと分けて植えていただくととてもわかりやすいのに・・・と思うほど、佐藤錦の隣に高砂が植えてあったり、紅秀峰だったりと、2本以上の品種を取り混ぜ栽培しています。
それにはちゃんとした理由があったのです。
さくらんぼは、同種や近縁種の”花粉”では受精できなかったり、成長しても止まったりして繁殖できない性質です。これを「自家不親和性」といいます。そのため、必ず他の品種を受粉樹としてさくらんぼの園内に受粉樹が3~4割ほど混ぜて植えなければなりません。
しかも、違う遺伝子を持つ品種同士で。
たとえば「佐藤錦」と「南陽」、それから「高砂」と「紅さやか」は同じ遺伝子を持つさくらんぼですが、これら同士は実を結ばないため、混植する品種の組み合わせには注意が必要となるそうです。
受粉樹として違う品種なら、何でも良いわけではないのですね。
栽培しようとするさくらんぼと相性がよく、受精しやすい性質であること。たとえば、佐藤錦なら、ナポレオン・紅さやか・ナポレオン・高砂・大将錦など。ナポレオンには紅さやか・佐藤錦・南陽・大将錦など。紅秀峰なら、さおり・紅きらりとかになります。
さらに、開花時期がかなり違っても受粉がうまくいかないので、栽培しようとするさくらんぼよりも開花が1~2日ほど早い品種で、開花のずれが品種間で2日程度で済むような混植の組み合わせを選択することも重要だそうです。
でも、どうしても同じ花の花粉が付いてしまうのでは・・・?と思いますが、不思議なことに!同じ種の花粉は受付けないように、さくらんぼ自身が花の柱頭で防御物質を作り出し、自家受粉を妨げているということ。自然ってすごいですね。
しかし、さくらんぼのなかには自身の花粉で受粉して身を付ける「自家結実性」が高いさくらんぼがあるそうなので、家庭園芸用としてはおススメです。”暖地桜桃”や”ステラ”、”紅キラリ”、“さおり”などという品種がそれにあたるそうですから、お庭にさくらんぼを植え、実をならせたい方は品種にお気をつけくださいね。
受粉に活躍するミツバチやマメコバチ
さくらんぼの花が開花する頃、さくらんぼ園の中にはミツバチが入った箱が所々に置かれています。また、ヨシの束がぎっしりと詰められている筒状や箱状のマメコバチの巣も置いてあります。これらは受粉を手助けしてくれるハチたちの巣なんですね。
上の画像はミツバチの巣。毎年養蜂業者さんからレンタルしています。
ミツバチは体調3ミリ前後(ハタラキバチ)で、行動範囲は養蜂に使われる蜂で半径約4キロ程、ニホンミツバチ(野生種)は約2キロ 程で、年間通して飛び回り花の蜜を集めます。
しかし、ミツバチは15度以上にならないと活動しないため、開花時期に気温が低かったりすれば受粉の働きをせず、さくらんぼの生育に大きな影響を与えてしまいます。
もう一方のハチのマメコバチは周囲の里山にもともと生息している在来の蜂で、その昔はマメコバチは農家のかやぶき屋根にたくさん巣を作っていました。今、かやぶき屋根は少なくなりましたが、さくらんぼ農園では大いに役立ってくれていたのですね。秋に河原でヨシを刈って筒の束を作り、マメコバチを集めて開花の頃に活躍してもらいます。
マメコバチが広く使われる理由は、12度位からの低温でも活動するため、さくらんぼの開花時期に天候不順が続きて気温が低くても受粉してくれるからなんです。小さなハチですが、とっても働き者!! サクランボの受粉には欠かせないハチです。
マメコバチは花粉だけを集めるハチで、ヨシなどストロー状の巣の中で花粉塊を作りたまごを生みつけ土で仕切りをしていきます。(孵化した幼虫は花粉塊が餌となる)
行動範囲は半径300メートルで、4月5月の1ケ月半の間しか活動せず、その後は翌年の春までサナギのまま過ごします。そして翌年の春、卵が孵ると、再び飛び回って花粉を集めます。なんとも健気なハチですね。
いずれにしても、開花の頃はお天気が良くて暖かい日が続くことを願うばかりです。
農家さんが毛バタキで受粉を促す
とはいえ、昆虫ですからお天気や気温で活動の範囲は変わるのは否めません。そのため、農園の人たちは毛ばたきを使って人工受粉をしています。
毛ばたきは、水鳥の羽毛やダチョウの羽で作られています。
受粉の方法は「A品種の花を擦ってB品種の花に擦り、又、A品種の花を擦って・・・」を繰り返し異品種同士の花粉を交換するという、大変な作業!しかも責任重大です!
そして、5月の下旬ごろにはさくらんぼが実を結び、まさに可愛い<さくらん坊>たちが誕生します。
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